Windows用パッケージマネージャー Scoop の、マニフェストの作り方と自動更新のしかた
Scoop ではアプリのインストールの仕方をマニフェストという名のJSONファイルに書き、そのマニフェストの集合体をバケットと呼びます。
メジャーなものであれば、Scoop の公式バケットにもすでに充分な数のアプリがあります。ですがマイナーなアプリになると、あるいは日本人しか使わない(使えない)ものになると、意外と収録されていません。
ここでは、マニフェストの書き方にはじまり、その自動更新の仕方までをご紹介します。
そもそも?
そもそも、なぜわざわざマニフェストを自分で作るのでしょう?
公式リポジトリに要望を出せば、誰かが作ってくれるかもしれません。それに、アプリのインストールなんて「普通は」最初の一回だけなのだから、わざわざマニフェストを書く前にインストーラーをポチポチすればいいだけのはずです。
だからマニフェストを書く動機があるとすればそれは、複数回インストールする予定があるから、ということになるでしょうね。たとえば、Windowsの仮想環境を何度もセットアップする必要があるだとか、ですね。ただ私自身は、Windowsの新バージョンが出るたびに (年に複数回) PCをクリーンインストールするような奇特な人間なので、単純に自分自身のために必要だったというのが理由です。
バケットの作り方
マニフェストは単なる一つのJSONファイルにすぎないし、バケットといってもただのフォルダーです。
最初はわざわざバケットのことを意識する必要はないかもしれません。この段落を飛ばして、マニフェストの書き方の方を読んで下さい。
さて作り方ですが、適当なフォルダー (たとえば scoop-bucket
とか) を作って、そこにbucket
というフォルダーを作ります。
以上です。そこにマニフェストのJSONを放り込んで行くわけです。
もしそのバケットをGithubなどで公開するつもりなら、scoop-bucket
の直下に README.md
と LICENSE
くらいは用意しておきましょう (後者はGithubに公開してからでも追加できます)。
この記事を読むような人であればターミナルの使い方に習熟していらっしゃるでしょうからコマンドで説明すると、
cd scoop-bucket mkdir bucket touch README.md git init # その後は # cd bucket # touch アプリ名.json # git add # git commit
といった流れです。
マニフェストの書き方
さて本題に入りましょう。
Scoop のWikiに情報がまとまっているので、迷ったら参照してください。
今回はこれを題材にして解説します。MIDI編集ソフト Domino のマニフェストです。
基本となるテンプレート
どんなプロパティがあるかの説明をしながらだと遠回りになるので、テンプレートを提示しておきます。ほぼ全てのプロパティを準備してあるので、作成の際はここから要らないものを取り除いていくだけです。
これをコピーして使ってくださっても結構です。というのも、このGithubリポジトリのライセンスはCC0、つまりパブリックドメインなので。
ただし今回はイチから書き始めていくことにします。
0. ファイルを作る
ここでつけたファイル名がそのまま、インストールするときのアプリ名になります。アルファベット大文字小文字およびハイフンが使えます。公式的には全て小文字で書くルールになっているようです。
今回は、 domino-test.json
とでもしておきます。
1. description, homepage
マニフェストの中で必須プロパティは、
- 説明文
- 公式サイト
- ライセンス
- バージョン番号
の4つです。
まずはそのアプリの公式サイトと簡単な説明文を書きます。公式サイトが無くて、たとえばベクターや窓の杜などで配布されているものはそちらを書いても良いかもしれません。
ここまでの記述:
{ "version": "", "description": "Domino: MIDI editor", "homepage": "https://takabosoft.com/domino", }
2. license
次にライセンスを指定します。
フリーソフトとして配布されているものであれば、たいていの場合は Freeware
とだけ書けば充分だと思います。
その他明示的に GPL
や MIT
などと指定されている場合は、それに従います。その際、 SPDX ライセンス一覧 に書かれている表記を使います。
{ // ...省略 "license": "Freeware", }
3. checkver
であれば次はバージョン番号…となりそうなものですが、実は書かなくても大丈夫です。後述の自動更新スクリプトにより、自動でセットされます。
そしてその自動更新のために、バージョン番号はどこから取得すればいいかを checkver
に指定します。
たいていのアプリは、配布サイトのどこかにバージョン番号が書かれているので、それを探します。
Domino の場合はおあつらえ向きに更新履歴のページがありました。これを checkver.url
に書きます。
そのHTML内で、バージョン番号にあたる部分を正規表現で抜き出します。今回の場合は H4 タグにバージョン番号が書かれているので、その部分にマッチする正規表現を書き、これを checkver.regex
に書きます。
複数マッチする場合は、最初の一つが使われます。
正規表現で置換したときに $1
になる部分にバージョン番号が入るようにすればOKです。
{ // ...省略 "checkver": { "url": "https://takabosoft.com/domino/releasenotes", "regex": "<h4>Domino Ver.([\\d.]+)" }, }
4. autoupdate
checkver
で取得されるバージョン番号をもとに、アプリをダウンロードするURLを指定します。
Domino の場合は、 https://takabosoft.com/download/win/domino/Domino144.zip
となっており、 144
の部分にバージョン番号を当てはめれば今後のバージョンアップにも追随できると思われます。
そして、さきほど正規表現にマッチしたバージョン番号は $version
という変数で受け取れます。ただ今回は、 Domino144.zip
のように、ピリオドを抜いた形で書かなければなりません。こんなときは代わりに $cleanVersion
を使います。その他、色々なパターンのバージョン番号に対応できるよう、様々な変数が用意されています。
一覧は バージョン変数の一覧 に書かれていますが、ここにも掲載しておきます。
変数 | 例 |
---|---|
$version |
3.7.1 |
$underscoreVersion |
3_7_1 |
$dashVersion |
3-7-1 |
$cleanVersion |
371 |
$matchHead |
ピリオド区切りで最初の2または3個の数字。
|
$matchTail |
$matchHead の残り。
|
$preReleaseVersion |
最後の- 以降の全て
|
$version
が 3.7.1.2
だったとすると、ピリオドで区切られて各部が変数に入ります。
変数 | 例 |
---|---|
$majorVersion |
3 |
$minorVersion |
7 |
$patchVersion |
1 |
$buildVersion |
2 |
正規表現で捕獲した文字列は、順に $match<数字>
として使えます。正規表現で名前付き捕獲を使うと、 $match<名前(先頭大文字)>
として使えます。
v3.7.1/3.7
という文字列にマッチさせるために v(?<version>[\d.]+)\/(?<short>[\d.]+)
という正規表現を使った場合、以下のようになります。
変数 | 例 |
---|---|
$match1 または $matchVersion |
3.7.1 |
$match2 または $matchShort |
3.7 |
{ // ...省略 "autoupdate": { "url": "https://takabosoft.com/download/win/domino/Domino$cleanVersion.zip#/dl.zip" } }
手動でバージョン番号の更新
さて、ここまで書けたら、一旦、バージョン番号がちゃんと取得できるか試してみましょう。
と、その前に注意点が3つ。
- 空文字 (
""
) ではなく何かしら文字を入れておくこと ("-"
とか)。スクリプトの仕様で、空文字をセットしたプロパティは、存在しないのと同じと解釈されるようで、エラーのもとになります。 - マニフェストの動作テストをするときは、バージョン番号をゼロなどできるだけ低くする。
checkver
で取ってきたバージョン番号よりもversion
の番号の方がが大きいとき、更新が行われません。 - URL末尾の
#/dl.zip
については、今は気にしないでください (後述します)。今回はなくても動きますが、これこそ scoop のポータブル化の仕組みの秘密です。
{ "version": "0", "description": "Domino: MIDI editor", "homepage": "https://takabosoft.com/domino", "license": "Freeware", "url": "-", "hash": "-", "checkver": { "url": "https://takabosoft.com/domino/releasenotes", "regex": "<h4>Domino Ver.([\\d.]+)" }, "autoupdate": { "url": "https://takabosoft.com/download/win/domino/Domino$cleanVersion.zip#/dl.zip" } }
scoop のインストールされたフォルダー内に、 checkver.ps1
というPowershellスクリプトが付属しています。
# マニフェストのあるフォルダーに移動しておく cd scoop-bucket\bucket # 「scoop prefix <アプリ名>」 で、そのアプリのインストール場所が取れる & "$(scoop prefix scoop)\bin\checkver.ps1" -App domino-test
バージョン番号が出ましたか? domino: 1.44 (scoop version is 0) autoupdate available
のようになれば成功です。
それでは、-Update
引数を付けて実行します。これにより、最新バージョンの番号とURLがマニフェストに書き込まれます。今後はいきなり -Update
引数を付けて実行しても問題ありません。
& "$(scoop prefix scoop)\bin\checkver.ps1" -App domino-test -Update
ちなみに -Force
フラグを付けて実行すると、前述のように、checkver
で取ってきたバージョン番号よりも version
の番号の方がが大きくても、強制的に更新しようとします。
& "$(scoop prefix scoop)\bin\checkver.ps1" -App domino-test -Update -Force
5. bin, shortcuts
ここまでのステップで、すでにscoopでのインストールはできる状態になっています。
ですが今のままでは、スタートメニューのショートカットがないのでアプリを起動するのが少し面倒です。なのでショートカットを追加していきます。
インストールされると、本体は C:\Users\<ユーザー名>\scoop\apps\domino\current\Domino.exe
というところにあります。
C:\Users\<ユーザー名>\scoop\apps\domino-test\current\
を基準として、そこからの相対パスでショートカットを指定します。配列の1つ目が実行ファイルへのパス、2つ目がショートカットの名前です。
bin
も同様にショートカットなのですが、こちらはターミナルから起動する際のコマンド名です。今回の場合、Dominoをターミナルから起動する意味はほとんどないので省略しても良かったのですが、あとから追加するのも面倒なので書いておきました。
{ // ...省略 "bin": "Domino.exe", "shortcuts": [ [ "Domino.exe", "Domino" ] ], }
注意として、以下のような1階層の配列ではありません。配列の配列で書きます。
{ // ...省略 "shortcuts": [ "Domino.exe", "Domino" ], }
6. persist
これは何かというと名前のとおり、設定ファイルを「persist (存続)」させるものです。ここに指定したファイルやフォルダーを専用の場所に隔離します。
これにより、
- バージョンアップを経ても同じ設定を引き継げる (scoopではバージョンアップごとに上書きせず、別フォルダーにインストールする)
- ポータブル化しつつ、バックアップが容易になる
などの利点があります。
隔離といっても、移動してしまってはアプリの動作に支障をきたすので、persistフォルダー内のファイルと、それが本来ある場所とをシンボリックリンク (ないしハードリンク) で繋ぐことで実現しています。
Domino の場合、起動すると IniFiles
というフォルダーが作られ、そこにユーザーごとの設定が記録されていきますので、これを指定します。
{ // ...省略 "persist": "IniFiles", }
ただし、フォルダーでなくファイル (たとえば、 settings.ini
みたいな) を persist したい場合に一癖あるので、ご注意を。そのままだと、隔離先に settings.ini
という名前の「フォルダー」が作られてしまいます。これを回避するには、別のプロパティ pre_install
にスクリプトを書かなければならないのですが、これはまたの機会に。私のリポジトリ内でもいくつかこれを使っているので、必要な場合はご覧ください。
インストールしてみる
ここまで書いたら、最初に掲示したJSONと同じものが出来上がっているはずです。
では、これを使って実際にインストールしてみます。
# マニフェストのあるフォルダーに移動しておく cd scoop-bucket\bucket scoop install .\domino-test.json
うまくいきましたか?これで無事にマニフェストが一つ出来上がりました!
スタートメニューを開いて、「全てのアプリ」→「Scoop Apps」フォルダーを開いてみてください。そこに今記述したアプリが追加されているはずです。
公開後
このバケットを Github などで公開した場合は、忘れずに自分のバケットを sccop に追加しておきましょう。
# scoop bucket add <バケット名> <バケットURL> の形式。 scoop bucket add <わかりやすい名前> https://github.com/<ユーザー名>/<リポジトリ名>
その後、 scoop update
すると、あなたの作ったマニフェストが利用できるようになっています。
ただし、いきなりインストールする前に、さきほどローカルのJSONで試しにインストールしたほうをアンインストールしておきましょう。インストールのときは拡張子つきで名前を指定しましたが、アンインストールのときはアプリ名だけで大丈夫です。
ローカルでインストールしたのかリポジトリ経由でインストールしたのかわからなくなった場合は、
scoop list
とすると、 Source
欄にインストール元が書かれているので、その中にローカルのファイルパスが書かれているかどうかで判別できます。
マニフェストの自動更新
マニフェストができたからといって、これで終わりではあまり意味がありません。もしそのアプリに新バージョンが公開されても、それに追随できないからです。
上で書いたように、手動で更新コマンドを毎日実行するというのも悪くないと思いますが (私も最初はそうしていました)、どうせなら自動で更新するようにしてみましょう。
git と Github を使ったことがあるなら、おすすめは Github Actions を使う方法です。とはいえ自分でイチからワークフロー設定を書き上げる必要はありません。 C:\Users\<ユーザー名>\scoop\buckets\main\.github\workflows
に、公式も使っているワークフローが置いてあるので、これをお借りしましょう。
さきほどのフォルダーを、あなたのバケットにコピーしてきます。バケットが scoop-buckets
という名前であれば、 scoop-buckets\.github\workflows
です。
そして、マニフェストも含めてそれらを git にコミットします。あとはこの scoop-buckets
リポジトリを Github にプッシュすれば、一日に数回、全自動でマニフェストを更新してくれます。
Actions の実行結果は、Github上であなたのリポジトリを開き、上のメニューにある 「Actions」から確認できます。
ちなみに、 excavator.yml
が自動更新を担当しているのですが、その中に実行間隔を指定する箇所があります。標準では一日に6回も更新を確認するようになっています。さすがにそんなに頻繁にチェックしなくても問題ないと思いますので、頻度を下げておいてもいいと思います。自分は以下のように、12時間ごとに(一日に2回)チェックするようにしています。
schedule: # run every 12 hours - cron: '20 */12 * * *'
#/dl.zip
マニフェストの URL 欄に、 #/dl.zip
という見慣れない文字列が付いていました。これについても紹介しておきます。
記事で取り上げたDominoはもともとzip形式で配布されているので、インストール作業はそれを解凍するだけで済みました。
ですが他のアプリでは、.exe
や .msi
といったインストーラー形式のこともあります。こういった場合に意味を持つ指示なのです。
URL の末尾に #/
およびファイル名を書いておくと、 scoop はそのインストーラーを指定したファイル名で保存します。たとえば元の名前が installer.exe
だったとして、 installer.exe#/dl.7z
と指定すると、ファイルは dl.7z
という名前で保存されます。
これで何がいいかというと、 exeファイルを 7-zip で解凍できるようになるのです (7-zip 自体は scoop のインストール時に自動でインストールされています)。そうすると、インストーラーを起動せずに、直接中身を取り出せるようになります。こうして scoop は、インストーラー付きのアプリでもポータブル化することができるわけです。
その他
他にも様々なプロパティがあるので、見てみてください。結構自由度が高いです。
##
: コメントが書ける。architecture
: 32bit 版と 64bit 版がある場合にそれぞれの動作を記述できる。depends
: アプリの依存関係を定義できる。依存アプリは、まだインストールされていなければ自動でインストールされる。env_set
: 環境変数をセットできる。extract_dir
: zipファイルの中の特定のフォルダーだけを取り出す。zipの中に同名のフォルダーがある場合に有用。installer
: 独自のインストール処理を記述できる。標準機能では不十分なときに。notes
: インストール後にターミナルに書かれる、ユーザーへのメッセージ。pre_install
: インストール直前の処理を記述できる。私は、もっぱらファイル (フォルダーでなく) をpersist
するときに使っている。post_install
: インストール直後の処理を記述できる。shortcuts
: 実はショートカットの引数やアイコンも指定できる。url
: 実は複数のURLを指定できる。
Windowsでアプリのインストールを楽にする Scoop
scoop とは
一言でいうと、Windowsへのアプリのインストールを自動化する仕組み (スマホでいうところのアプリストア)。
- 公式サイト: https://scoop.sh
- コマンドのヘルプなど: https://github.com/ScoopInstaller/Scoop/wiki
特長
様々なアプリのインストールが、一貫した操作で一元管理できます。もし scoop を使わなければ、
- 公式サイトを検索して開き、
- そこから自分の環境にあったインストーラーを見つけ、
- ダウンロードし、
- ダブルクリックで開いて、
- 「次へ」を何度も押し、
- 場合によっては余計な抱き合わせ製品をインストールさせられ、
ようやくインストール完了、となります。
これを肩代わりしてくれるのが、scoop
です。
Windowsのアプリケーションを、コマンド操作でインストールできます。
主にポータブルアプリの管理に威力を発揮します。 zipを解凍するだけでいいタイプのアプリは、ファイルの置き場所があっちこっちに散らばったりするものですが、scoopは一貫性のあるフォルダーにアプリを配置してくれるので置き場所に困りません。
しかも、もともとポータブルでない、インストーラーつきのアプリであっても、ポータブル化できます。 これはインストーラーを自動操作しているわけではなく、インストーラーの中身を直接取り出すことで実現しています。
アプリケーション本体と設定ファイルを分離して、設定ファイルだけをバックアップしやすくなるよう配慮されています。フォルダー一つをコピーするだけで、すべてのアプリのバックアップが完了するわけです。 これにより簡単に、他のPCにも使い慣れた環境を用意できます。
バージョンごとにフォルダーを分けて配置するので、バージョンアップで不具合が出ても、前のバージョンに簡単に戻せます(古いバージョンを消していなければ)。
他にも Windows向けのパッケージマネージャーはあって、それぞれにメリット・デメリットがあるので、違いを見ていきます。
比較
Microsoft Store
マイクロソフト公式の、パッケージマネージャーというよりはアプリストア。
pros
- Windows 10以降に標準で入っているので、使うために特段の手順は必要ない。
- GUIがあり、見た目で操作がわかりやすい。
- 数回のクリックでインストールできる。
- 新バージョンが公開されると、アプリが自動更新される。
- アカウント個別にインストールされるので、他のアカウントに影響を及ぼさない。
cons
- ストアに登録されていない従来型のアプリケーションは多い。そういったアプリをストアに登録するためには、アプリの作者にやってもらう必要がある。
- 設定ファイルは深いフォルダーにあるため、アプリの設定のバックアップが難しい。
- しかもそのフォルダーの名前がバージョンアップごとに変化するため、実行ファイルのパスも固定でない。たとえば、 Microsoft ストアからインストールした WindowsTerminal の場合、
C:\Program Files\WindowsApps\Microsoft.WindowsTerminal_<バージョン番号>_x64__<謎の英数字>\WindowsTerminal.exe
にある。
winget
これもマイクロソフト公式のパッケージマネージャー。
実は アプリ インストーラー
という名前で、Windows10以降に標準搭載されている。
ターミナル(コマンドプロンプト)での操作でアプリを管理する点ではscoopと似ている。
pros
- microsoft 公式なので安心感がある
- マニフェスト(アプリ個々の、インストールの仕方を書いた手順書)は、無ければ作って投稿することで、アプリ作者でなくても追加できる。
- アカウント個別にインストールされるので、他のアカウントに影響を及ぼさない。
cons
- マニフェストの自動更新機能がないので、新バージョンに追従できない。
- 手動でインストールしたのか、winget でインストールしたのか区別できない。
chocolatey
コミュニティにより運営されている、パッケージマネージャー。
公式サイト: https://chocolatey.org
ターミナルでのコマンド操作が基本だが、見た目にわかりやすいGUIが用意されているので、初心者でも迷わない。
pros
- GUIで操作がわかりやすい。
- マニフェスト(アプリ個々の、インストールの仕方を書いた手順書)は、無ければ作って投稿することで、アプリ作者でなくても追加できる。
- システム全体に (
C:\Program Files
) インストールされるので、アプリのインストールやアンインストールは他のアカウントにも影響を及ぼす。 - OSセットアップツールである
Ansible
に対応しているため、大量の Windows PCをセットアップするのが多少楽になる。
cons
- インストールにいちいち管理者権限が必要。
- マニフェストを書くには複雑なプログラムを書く必要がある。
scoop
pros
- ポータブル化
- レジストリを汚さない
- 環境変数も最小限
- にも関わらず、スタートメニューから簡単に起動できる
- システム全体にインストールしないので、他のアカウントに影響を及ぼさない。
- バージョンアップを見逃さない (アプリの自動更新まではやってくれない)
- 自分でマニフェストを作るのも簡単
cons
- GUIがなく、すべてにおいてコマンド操作が必要
C:\Program Files
のようなよくある場所ではなく、独自の場所にインストールされる。
基本的な使い方
scoop 自体のインストール
まずターミナルを起動します。といっても2クリックで完了します。タスクバーにあるWindowsマークを右クリックして、「ターミナル (Terminal と英語表記のこともある)」をクリックします。
そのPCでターミナルを使うのが初めての場合 (インストール直後など) は以下のコマンドを実行しておく必要があります。
Set-ExecutionPolicy RemoteSigned -Scope CurrentUser
その後、以下のコマンドをコピペしてエンターを押すと、全自動でセットアップが終わります。
irm get.scoop.sh | iex
これにより、ユーザーのホームディレクトリに scoop というフォルダーが作られ、以降はそこに各種アプリがインストールされていきます。具体的には C:\Users\<ユーザー名>\scoop
です。
バケットの追加
scoop では、アプリのインストールの仕方 (マニフェスト) のひとまとまりのことを、バケットと呼びます。 インストール直後では、ごく一部のマニフェストしかない (具体的には、「ターミナル上で動かすコマンド」しかない) ため、VS Code や Chrome などのアプリは含まれていません。そういった GUI アプリが含まれている別のバケットは、使いたいぶんだけ個別に追加する必要があります。
公式バケット
公式バケットの一覧は次のようにして取得できます。
scoop bucket known
- main : 最初から入っているバケット。ターミナル上で動かすコマンドがまとまっている。
- extras : GUI のアプリが含まれる。このバケットだけでだいたい揃う。
- versions : 各種アプリの固定バージョンが含まれる。
- nirsoft : nirsoft 製品が含まれる。
- php : PHP 関連
- nerd-fonts : フォントが含まれる。
- nonportable : どうしてもポータブル化できないアプリが含まれる。
- java : Java 関連
- games : ゲーム関連。 Steam や Ubisoft のクライアントや、エミュレーターなど。
この中から、使いたいバケットを追加していきます。
scoop bucket add extras scoop bucket add nonportable
コミュニティのバケット
scoop が面白いのは、公式に含まれないアプリであってもバケットを自作できるところです。
たとえば私は、日本語版しかないものなど、日本人向けのものを自作バケットに採録しています。
よかったらどうぞお使いください → github.com
# scoop bucket add <バケット名> <バケットURL> の形式。 scoop bucket add mo-san https://github.com/mo-san/scoop-bucket
もちろんこれ以外にも、世界中の人々が自作バケットを公開していらっしゃるので、もし公式バケットになくてもそちらにあれば借りてくることができます (ただし更新が止まっててバージョンが古かったり、急にマニフェストが消えたり、とかはある…)。
アプリのインストール
scoop install <アプリ名>
アプリのアンインストール
scoop uninstall <アプリ名>
でアンインストールできます。
scoop uninstall --purge <アプリ名>
とすると、persist
フォルダーにある設定ファイルも含めて、完全に削除します。
更新情報の取得
scoop update && scoop status
で、新しいバージョンが公開されたアプリの一覧が表示されます。
アプリの更新
# 個別にアップデートする場合は scoop update <アプリ名> # 全部一気にアップデートしたい場合は: scoop update *
アプリの検索
scoop search
コマンドで、ダウンロードしたバケット内を検索できるのですが、異様に遅いです。
公式サイト scoop.sh の検索機能を使うのがおすすめです。
欲しいアプリ名がわかっている場合は、検索欄にアプリの名前を入力します。
アプリ名とマニフェスト上の名前が異なっていることがあるので、いくつか検索ワードを変えて試してみましょう。たとえば、 Process Monitor
というアプリケーションは、 procmon
という名前で登録されていたりします。
右上のメニューから Official buckets only
のチェックを外すと、非公式のコミュニティバケットも検索されます。
余談ですが、この検索が説明文にも引っ掛かるのを利用して、まだ知らないアプリに出会うのにも使えます。たとえば editor
で検索すると、 FamiStudio
という8-bit チップチューンの編集ソフトが出てきました。
インストールしたアプリの一覧
一覧を得るコマンドは2種類あります。
scoop list
では表形式で表示されます。Powershellのオブジェクトなので、 (scoop list | Select-Object -Property Name).Name
などとするとアプリ名一覧が取れます。
scoop export
では、JSON形式で表示されます。
{ "apps": [ { "Info": "", "Name": "7zip", "Updated": "2022-09-22T18:30:24.6504762+09:00", "Source": "main", "Version": "22.01" }, { "Info": "", "Name": "aimp", "Updated": "2022-09-22T18:33:59.992216+09:00", "Source": "extras", "Version": "5.03.2398" }, // ... 省略
scoop 自体のアンインストール
⚠️これをすると、 scoop でインストールしたすべてのアプリごと消えてしまうので注意
scoop uninstall scoop
こんなときは
scoop update
したときの、ずらずら流れる更新情報を表示させない
scoop config show_update_log false
aria2
に関する警告を表示させない
scoop config aria2-warning-enabled false
別のバケットに同名のアプリがあってバッティングしてしまうとき
アプリ名の前にバケット名を付け加えることで、バケットを特定してインストールできます。
scoop install extras/vscode
scoop 自体のインストール場所を変更したい場合
インストールする前であれば、以下のコマンドを実行し、その後インストールコマンド (irm get.scoop.sh | iex
) を実行します。
要は SCOOP
という環境変数を作り、そこにお望みのパスを指定するわけです。
自分は以下のように C:\scoop
にインストールしています。
$env:SCOOP='C:\scoop'
もしすでにインストールしてある場合は、同様に環境変数をセットしたあと、scoopフォルダーを新しい場所に移動するだけです。 起動中のアプリがあるとフォルダーが移動できませんので、その点はご注意を。
バケットの作り方
…は、けっこう長くなるので、別の記事にて。
PCをスリープモードや休止状態にする Powershell スクリプト
PCで何か長時間かかる処理をさせたあとで、自動でスリープモードになってほしいときがありました。
これをPowershellでできるようにしてみました。
遠隔地にある Windows PCにSSHで入っているときにも使えます…が、そんなことしてるひといるかな?
使うときはこんな感じで。
# この場合だと、即座にスリープモードに入ります Start-Suspend -To Sleep # 10分待機したあとでスリープする Start-Sleep -Seconds $(60*10); Start-Suspend -To Sleep # このようにすると、マウスやキー入力でスリープモードが解除されないようにできる Start-Suspend -To Sleep -DisableWakeupEvents # 休止状態にしたいときは↓ Start-Suspend -To Hibernate
以下、スクリプト。
function Start-Suspend { Param ( [parameter(Mandatory = $true)] [ValidateNotNullOrEmpty()] [ValidateSet("Sleep", "Hibernate", IgnoreCase)] [string]$To, [switch]$Force, [switch]$DisableWakeupEvents ) $signature = @' [DllImport("powrprof.dll")] public static extern bool SetSuspendState( bool bHibernate, bool bForce, bool bWakeupEventsDisabled ); '@ Add-Type -Namespace MyNameSpace -Name Power ` -MemberDefinition $signature -ErrorAction SilentlyContinue $isHibernate = $To.ToLower() -eq "hibernate" [MyNameSpace.Power]::SetSuspendState( $isHibernate, $Force, $DisableWakeupEvents) ` | Out-Null }
モニターを点灯・消灯する Powershell スクリプト
夜間に長い作業を裏で行っているあいだ、眩しく光るモニターを消灯できないかと考えた。
コマンドではないが、 PostMessage
を使えばできるようだ。
Powershell を使ってそれをする関数を書いてみた。 Windows 10 および Windows 11 で検証した。
使い方はこんな感じ。 モニターを消しても、マウスやキーボードを動かすと点灯する。
ちなみに、 LowPower
というパラメーターがあるけど、実行しても何も起きなくてよくわかってない。
Set-MonitorState -TurnMonitor Off
function Set-MonitorState { param ( [Parameter(Mandatory = $true)] [ValidateNotNullOrEmpty()] [ValidateSet("On", "Off", "LowPower")] [string]$TurnMonitor ) $signature = @' [DllImport("user32.dll")] public static extern bool PostMessage( uint hWnd, uint Msg, IntPtr wParam, IntPtr lParam ); '@ Add-Type -Namespace MyNameSpace -Name Utils -MemberDefinition $signature -ErrorAction SilentlyContinue $CONST = @{ HWND_BROADCAST = 0xFFFF WM_SYSCOMMAND = 0x0112 SC_MONITORPOWER = 0xF170 } $lParam = switch ($TurnMonitor) { "On" { -1 } "LowPower" { 1 } "Off" { 2 } } [MyNameSpace.Utils]::PostMessage( $CONST.HWND_BROADCAST, $CONST.WM_SYSCOMMAND, $CONST.SC_MONITORPOWER, $lParam) ` | Out-Null }
ファイルやフォルダを右クリックすると現れる「OneDriveに移動」を消す
もちろん、OneDrive 自体をアンインストールすればメニューも消える。
ただ、OneDrive を手軽なオンラインストレージとしてそれなりに使っている。
OneDrive の機能は維持しつつも、コンテキストメニュー項目だけを消したい、そんなわがまま私とあなたに。
することは要するに、特定のレジストリを削除するだけです。
削除対象は HKEY_CLASSES_ROOT\PackagedCom\Package\Microsoft.OneDriveSync_22202.925.2.0_neutral__8wekyb3d8bbwe\Server
です。
ただし Microsoft.OneDriveSync_22202.925.2.0
の数字の部分は OneDrive のバージョン番号なので、本体のバージョンアップに合わせて実行し直す必要があります。
レジストリを操作するので、実行前に必ずバックアップを取っておきましょう。
レジストリエディターを開いて…というのがセオリーですが、せっかくなのでPowershellでやってみましょう。
こちらは管理者権限は要りません。
# バックアップするコード $now = Get-Date -format "yyyyMMdd_HHmmss" New-PSDrive -Name HKCR -PSProvider Registry -Root HKEY_CLASSES_ROOT -ErrorAction SilentlyContinue Get-Item HKCR:\PackagedCom\Package\* | ? { $_.Name -match "Microsoft.OneDriveSync_" } | % { reg export (Join-Path $_.Name Server) "onedrive_$now.reg" }
さて、本題の削除ですが、以下のコードを Powershell で、管理者権限で実行してください。 Get-Item から始まる行は、折り返されて複数行に見えていても一行です。
# 「OneDriveに移動」を削除するコード New-PSDrive -Name HKCR -PSProvider Registry -Root HKEY_CLASSES_ROOT -ErrorAction SilentlyContinue Get-Item HKCR:\PackagedCom\Package\* | ? { $_.Name -match "Microsoft.OneDriveSync_" } | % { Remove-Item -Path (Join-Path ($_.Name -replace "^[^\\]+", "HKCR:") Server) -Recurse -ErrorAction Continue }
レジストリ版
もしレジストリファイルで消したい場合は以下のような文字列をテキストファイルに書き、適当な名前で保存します。たとえば、 remove-onedrive.reg
とか。
それをダブルクリック、もしくは右クリックして「結合」すると、上で書いたコードと同じ効果を得られます。
ただしやはりバージョン番号の変更があるたびに数字を変更する必要があります。
Windows Registry Editor Version 5.00 [-HKEY_CLASSES_ROOT\PackagedCom\Package\Microsoft.OneDriveSync_22196.918.1.0_neutral__8wekyb3d8bbwe\Server]
戻したいときは、先ほどバックアップした .reg
を「結合」するか、以下の内容をテキストファイルで保存(onedrive.reg
とでも)して「結合」します。
Windows Registry Editor Version 5.00 [HKEY_CLASSES_ROOT\PackagedCom\Package\Microsoft.OneDriveSync_22196.918.1.0_neutral__8wekyb3d8bbwe\Server] [HKEY_CLASSES_ROOT\PackagedCom\Package\Microsoft.OneDriveSync_22196.918.1.0_neutral__8wekyb3d8bbwe\Server\0] "ApplicationId"="OneDrive" "ApplicationDisplayName"="OneDrive" "DisplayName"="Context Menu Items" "SurrogateAppId"="{5250E46F-BB09-D602-5891-F476DC89B700}"