透明マントで大きなものを隠せるように。

'Invisibility Cloak' Conceals Massive 3-D Objects | Polarization of Light & Metamaterials | LiveScience
By Charles Q. Choi, LiveScience Contributor
posted: 01 February 2011 02:02 pm ET

物を隠せる「透明マント」が、今では従来の数千倍も大きな物を隠せるそうだ。


物を覆い隠す(クローキング)デバイスがいつの日か単なる「スタートレック」の夢物語ではなくなる、という最初のヒントは5年ほど前に現れ始め、そしてそのころから研究者たちはそのようなマントをワープの光のように現実のものにしてきた。


光は自然界ではよく曲げられている。たとえば、蜃気楼は、砂漠の砂が熱くなるとそれが上方の光を曲げ、本当に空に反射する水の幻を創り出してできる。科学者の作ったクローキングデバイスは光線を完全に物体の周りに滑らかに導くので、光線は初めから何も無かったかのように元の軌道を進み続ける。


しかし、最初期に作られたクローキングデバイスは人の目には無意味だった。まず第一に、マイクロ波に限って有効で可視光には無効だった。また、これは2次元にだけ機能したので、3次元の物体には効果がなかった。


2010年、人間にもほぼ見えるくらいの光から3次元の物体を隠すように働く初の透明マントを科学者たちは創った。それでも、隠せる範囲は30ミクロン、つまり人間の髪の毛のおよそ3分の1の幅のみだった。


いま、3次元の物体を赤や緑のレーザーあるいは通常の白色光から隠せる透明マントが開発された。たしかに実演されたのは2センチメートル幅だけではあったが、「この透明マントの大きさは事実無制限です」とイングランドバーミンガム大学の物理学者Shuang ZhangはLiveScienceに語った。


今までに実演された透明マントはすべてメタマテリアルと呼ばれる人口合成構造で出来ていた。このメタマテリアルの製作技術は複雑で時間を要するものだったし、出来ても小さな透明マントで、それも同じくらいに小さな物体を限られた波長でしか隠すことのできないものだった。


それに比して、この新しい透明マントは自然に産出する方解石のプリズムでできている。この結晶は長辺の幅が約2センチメートルで、従来の透明マントの部品よりもずっと大きい。


科学者はこのプリズムを2つ接着し、横から見たときに矢尻型になるように形成した。空間も出っ張りも、この矢尻のもとではどんなものでも視界から消える。


「もっと大きな物体を隠せるようにスケールアップすることはいつでも可能です。」Zhangは言う。「まさに、自然に見つかる方解石の大きさによるのです。文献によれば、最大の方解石の大きさは、7メートル×7メートル×2メートルです。そのような結晶ならば、幅数メートルで高さ40センチの物体を隠せる透明マントの構築が可能でしょう。」


この透明マントはひとつ重大な欠点を持っている。隠ぺい機能は偏光が重要なのだ。すべての光波は上下左右に、あるいはその中間のあらゆる角度に波打つことをご存知の方もいるだろう。これを偏光という。この透明マントは特定の偏光にしか働かない。「ほかの偏光では出っ張りが見えてしまうのです。」とZhangは言う。


いうまでもなく、それでもこの透明マントは実世界で機能するでしょう、とZhang。たとえば、太陽が空の低いところにあるとき、水に入射する日光は「多くは偏光し、そして水面においた透明マントは見えなくなるでしょう。」と言う。「軍事的な応用があるはずです。例えば、何か、海面の潜水艦などを隠すためとか。」


また、たとえ透明マントの底の出っ張りが見えなくても、透明マントそのものはそれと周囲の物の境界でのちょっとした反射のために見えたままだ。「この反射は抗反射材をつけるか別の手段で、かなり減少させることは可能です。」とZhangは言う。


「"ハリーポッター"サイズの透明マント、つまり空気中で機能してとても大きな物体も隠せるようなものを作るのにはまだまだ挑戦が必要です。」とZhang。「メタマテリアルがカギですが、道のりは長いですよ。」


Zhnagらは2月1日付のNature Communicationsオンライン版で研究の詳細を発表している。