宇宙からの音が地球に届く?

Do Sounds From Space Reach Earth? ≫ Scienceline
By Emily Elert | Posted December 21, 2009


ルイジアナリヴィングストンのコンクリートで出来た犬走りに守られて、レーザー干渉計重力波検出器、通称LIGOは宇宙の音楽に同調し、聞き入っている。人間の可聴域で演奏される音楽だ。


「もし信号を受け取って、それをスピーカーに接続する方法があるとしたら、それを聞くことができるでしょうね。」と、マサチューセッツ工科大学の物理学者スコットヒューイは言う。


からくりはこうだ。信号そのものはとても、とても捉えるのが難しい。ヒューイ曰く、その影響は水素原子核の大きさよりも小さい振動なのだ。なぜなら、離れた銀河から来るノイズは、通常の音波に乗って我々のもとにやってくるのではなく、重力波と呼ばれる、異なる規模のエネルギーに乗ってやってくるからだ。


重力波は宇宙空間の大きなモノによって作られる。例えば超新星爆発とかブラックホールの回転や衝突などだ。このような事象によって、湖に落ちた小石のように、全方位にエネルギーのさざ波を送り出す。と言っても水の中で波を作るのとは違って、こういった超密度の物体から発生するエネルギーは時空そのものに小さな波動を、宇宙の大規模構造には振動を生み出す。


このような振動、つまりは重力波は1916年にアルバートアインシュタインにより一般相対性理論で予言されたが、直接に観測されたことはなかった。いま、科学者たちはまるで宇宙のドラムビートを聴いているかのようなLIGOなどの実験の助けを借りて、それらを初めて検知しようと期待している。


「我々がしたいのは、宇宙のサウンドトラックをかけることです。」と言うのはコロンビア大学バーナード校の理論物理学者ジャナ・レヴィンだ。「聞くことができれば、それはまるで考古学のようなものです。深く掘り進めていくんです。」と、彼女は宇宙の歴史について語った。


アインシュタインの方程式を使って物理学者たちは、重力波が様々な音源、例えば回転するブラックホール中性子星からどのように聞こえるのかということについてはすでにモデルを用意している。MITで重力波モデリングをするスコット・ヒューイの解説によると、波のピッチ、トーン、周波数は物体が互いにどのくらい影響しあうかで変わるという。言い換えれば、こういった宇宙の調べを聴くことによって、ブラックホールなどの巨大構造体がどのように形成されているかについて多くのことがわかるだろうし、銀河や宇宙の進化について重要な知見がもたらされることだろう。


LIGO――重力波を記録するために設計された地球上の検出器で、5つに分かれたうちの1つである――は二つの光の基線から成り、それぞれは全長5キロメートル、互いに直角にL字型に設置されている。重力波が通過すると片方の基線が伸びもう片方は縮む――高度に敏感な装置だけがはっきりとした信号に変換できるような作用だ。


LIGOは我々から見て近傍の宇宙の重力波だけを感知できるのだが、その対をなすものが計画されていて、LISA(the Laser Interferometer Space Antenna, レーザー干渉計宇宙アンテナ)はさらにずっと感度が高く、宇宙の最も離れた領域からやってきた波を捉えることができるほどになる。LISAの打ち上げは2018年に予定されている。


重力波探査の最後の主要な発見は1974年にあり、ともにプリンストン大学のラッセル・ハルスとジョゼフ・テイラーJr.は、望遠鏡を用いて連星パルサーを観測した。連星パルサーとは、高速に回転している大質量の中性子星であり、きっちり一般相対性理論で予測された割合でエネルギーを失っていた。つまり、それらが重力波を送り出していると仮定した場合にエネルギーを失う割合で、である。この業績でハルスとテイラー1993年のノーベル物理学賞を受賞した。


重力波を聴くことで科学者たちはブラックホールの振る舞いや銀河の進化について多くのことを学べるようになった一方で、バーナードの物理学者ジャナ・レヴィンはさらにもっと期待しているという。「きっとブラックホールではないものを見ることになります。」と言い、そして付け加えて、「私は、人類が今まで予測も出来なかったようなものを見てみたいです。」